Department of General Science of Art
Kyoto City University of Arts

芸研日誌
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いろトリどり
こんにちは。
十月に入ってようやくいつもの学校生活に戻れそうな田部です。芸祭の準備も着々と進み始められ、これから芸祭までは夜遅くもイベ凸の明かりが灯ると思うと少し心強いです。芸大生にとっては忙しい秋が始まります。
そんな観光シーズンに先日私は嵯峨嵐山文華館に「いろトリどり展」を見に行きました。こちらにはウェブ班で一度訪れたのですが、研究対象の花鳥画の展示ということで行ってきました。嵐山にある綺麗で和モダンな美術館で、今月から隣接の福田美術館が開館した今注目のスポットでもあります。二館とも合わせて行くべし。
嵐山に着いて、私はふらふら歩くのが好きなので遠回りして観光客でいっぱいの竹林道を通りました。人混みのストレスを竹のヒーリング効果によって現在進行形で癒しながら美術館に歩を進め、着いた頃には軽く汗をかいてました。美術館の涼しさがより身に沁みます。
今回開催中の「いろトリどり展」は近世から現代の「鳥」の絵を集めたものでした。花鳥画はもちろん、服飾の一部を彩る鳥なども取り上げた鳥づくしの展覧会。こちらの展覧会は撮影禁止の一部の作品を除きほとんどが撮影可能です。資料として残したい者には嬉しいところで、私は恩恵を受け撮れるものは全て撮ってしまいました。その写真を挙げながら自分の気になった作品を少しご紹介しようと思います。なんだが日誌なのに展覧会レビューな予感…
まず取り上げるのはこの作品。京芸に通う日本画の民には馴染みのある鶏です。

南蘋派の画僧である鶴亭(1722〜1786)の作品です。写実的に表現された鶏の立体感と細かな描写が見事。南瓜の葉脈にまで陰影が色濃く付けられていますが、その葉の動きには博物画のような固い印象を受けます。

言わずと知れた人気画家・伊藤若冲(1716〜1800)の作品が隣にあり比較できます。若冲は鶴亭の画風と類似点が指摘され、ここでも鶏の色濃い色彩や細かな描き込みが共通して確認できます。しかし誇張化されたコミカルな目、独自に形式化された羽の美しい並びは若冲ならではのものに思います。そこには写し取った固さは残らず、逆に垢抜けた印象を与えます。ただ写生をするのみにあらず、写生を生かし画面の中で若冲独自の世界を作るという自由奔放さが彼の人気の理由のように思いました。

続いては伊藤小坡(1877〜1968)の作品です。この麗しい二人のどこに鳥がいるのかというと…

ここです。頸ではなく帯をご覧ください。鳳凰のような色とりどりの鳥の模様が描かれています。この女性の着物は帯に鳥、裾に蝶が舞っています。軽やかで美しい鳥や蝶は女性を華やかに彩るため描かれたことがわかります。その模様が端麗な質感で描かれている作品です。小坡の描く女性は、松園の凛と見据えた女性とは異なり目が合わないものが多い気がします。私にはそのぽんやりとした柔らかさが小坡の女性像の愛おしさになっているように思いました。



どうしても忘れられないのが望月玉溪(1874〜1938)のこの鳥です。この表情はどこから来るのか…。何か卓越したような表情をしています。艶かしい、いや気味が悪いというのが第一印象でした。しかしこの近づき難さがある意味で「荘厳さ」にも繋がり、鳳凰たらしめているとも見られます。羽の動き一つも揺らめき浮き立つ様子が表れていて、鳳凰の神格化をよく目指し描かれた作品のように思いました。実際気味が悪いにも関わらず目が離せなくなり、じっくりと見てしまいました。昭和3年(1928)の昭和天皇の御大典に描かれた作品であるというのも納得です。


こちらは一目で気に入った作品です。西村五雲(1877〜1938)の作品は葉の水墨と緑青の滲みが美しく、潤った色がパッと目を惹きました。木に配された九官鳥の形状は的確に捉えられています。墨でさっと描いたようでありながら、動物の姿を正しく捉えているところが上手いな…と感心してしまいます。五雲は以前から好きな画家ではありましたが、ここでまた惚れ直しました。


現代作家の作品が一点ありました。中野大輔(1974〜)の作品です。確かな技術力で抜かりなく描き込まれた画面には圧倒されます。しかし画面全体に圧倒されあまりの重量感に耐えかねた私は隅にいる文鳥の方に心惹かれました。この子を持って帰りたい。
他にも土田麦僊や川合玉堂など面白い作品がたくさんあったのですが、今回はこのへんにしておきます。展覧会のキャプションには鳥の生態の説明もあり、鳥の知識を深めながら充実した鑑賞をすることができました。作品の感想をつらつら書いてしまいましたが、とても見応えある展覧会でした。特にこの美術館は二階会場が畳であるため膝をついてまじまじと作品鑑賞をできるのがいいところです。ぜひ皆さんも福田美術館と合わせてご覧ください。美術館のショップには鳥にちなんでとても見やすい野鳥図鑑が販売していました。鳥好きを引き連れてこれを片手にバードウォッチングに行きたいです。