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芸研日誌

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2020年06月14日

無い展覧会 第5回「愛ある世界」

畑中英二 撰

愛ある世界

美術様式としての桃山時代は戦国時代の終焉とともに到来する。応仁・文明の乱に端を発する戦国時代は京都を舞台とする政争であったことのみならず、地球的規模の小氷期にあたっていることもあり、閉塞感に満ち領国における政治的・経済的な保護を第一義とした時代でもあった。そこから解き放たれた奔放な表現が桃山時代の肝なのである。事実、同時代の日本をみ続けた宣教師たちは或るキーワードを用いる。「大閤以降」であった。

私たちが今経験しているコロナとの同居。いつ終わるか分からない閉塞感を憂いている人は少なくないだろう。今は桃山時代の芸術から「愛ある世界」を空目することしかできないが、暫しののち「大閤以降」を凌駕する時代の到来があると信じている。

ギャラリーのリンクは→こちらをクリック

作品タイトルをクリックすると、Google Arts & Culture上の作品解説のページに飛ぶようになっています。合わせてご鑑賞ください。

1:淡浅葱地葵紋付花重文辻ケ花染小袖【重要文化財】 桃山-江戸時代・17世紀 伝徳川家康着用

2:淀殿和歌扇子 桃山-江戸時代・17世紀 伝徳川家康着用

3:猛禽捕鶴図小柄 桃山-江戸時代・17-19世紀

4:志野矢筈口水指 銘「末広」桃山-江戸時代・16-17世紀

5:聖フランシスコ・ザビエル像 1623年以降

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Web班コメント

・なるほど、「愛」に溢れた展示ですね。小柄の猪目透がキュートです。猪目は魔除けのまじないとして使われることが多いのですが、そのルーツは奈良時代とか古墳時代だとか諸説あるようです。いずれにせよ、我々は昔から「愛」に見守られているわけですね(北)

・猛禽捕獲図って絵画では「鷙鳥図」という画題で、主に桃山〜江戸初期の屏風絵に描かれます。その中の代表作狩野山楽《鷙鳥図屏風》(重文)は木の上に鷹の巣が描かれ、雛たちの姿もあります。獲物を捕らえる猛禽は残酷なように見えますが、これも雛を育てるための「愛」なんですよねえ(田島)

・日本では人体解剖が大宝律令で禁止されてから、江戸時代に山脇東洋が行うまでずっとされなかったそうです。まさか猪目が心の臓と同じ形だと当時誰が想像しえたでしょうか……とても不思議な巡り合わせなような気がします(田部)

・聖フランシスコ・ザビエル像は、お世話になった地元の先生の親戚のお家で見つかったと聞いてから謎に親近感を抱いています….(池上)

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フレッシュな小田中さんからバトンを受け取りました。

比較的渋い目の作品構成でしたが、グッと迫り上がってくるような桃山時代の雰囲気を感じていただけましたでしょうか。

当然のことながら当時の人々はそれを「愛」の表象としてはいないのですが、戦乱の世を終えて「愛」が少し増えたのかもという思い込みで作品をチョイスしています。

全5点を貫く「愛」を空目していただけましたでしょうか?あるに違いないと思わないと見つけられないこともありますね。

次回はこれまたフレッシュな池上さんです。キラキラの作品が並びます。紫外線にご注意。